西表島の自然を体験するツアーガイドという仕事を通じて、豊かな自然や島での暮らしについてを綴っています。

西表島にいる小柄なイノシシ「リュウキュウイノシシ」は美味しい!?

「リュウキュウイノシシ」

【特徴】小柄なイノシシ、どんぐりが主食

【出会える度】★☆☆☆☆

【分布】奄美諸島から八重山諸島

 

小柄なイノシシ

「リュウキュウイノシシ」は小柄で体長も1m前後、体重は40kg~50㎏程度と言われています。
ツアー中にたまに遭遇するのですが、人間を見るとびっくりするのか逃げていきます。

昔、兵庫の六甲山で野生のイノシシに遭遇したことがあるのですが、本州のイノシシに比べると明かに小さい。
本州のイノシシは獰猛な大きいブタというイメージですが、リュウキュウイノシシは小型の獣といった具合。
近くでみると、やはり迫力はありますが、どこか愛嬌があるしぐさ。
見ていると愛らしい気持ちになります。

イノシシはカヤックから観察できます

そんなリュウキュウイノシシを、じっくり観察できるのはカヤックに乗った時。
岸に出てきたイノシシを、カヤックの上から見るときぐらいです。

カヤックに乗っていても、1km程度まで近づくと、ふと人間の気配を察知したのか
ビクッと顔を上げ、こちらをじっくりと見ることがあります。
そして、こちらが少しでも動くと「危険だ!」と察知するのか、猛ダッシュで森へ逃げていくことが多いです。

人間がイノシシを見れる距離でイノシシも人間を見つけることができるのですから、
人間並みの目を持っているんだなと感じます。

山の中をトレッキングすると痕跡が

山の中を散策すると、イノシシが土を掘り起こした跡や、歩いたと思われる獣道を発見することがあります。
どんぐりがない時期はミミズや木の根を齧ったり、時には砂浜へ出てウミガメの卵を食べたりもしているようです。

雑食なので、なんでも食べるようですが、やはり「どんぐり」が好きなようで、
どんぐりの落ちる時期にはシイの木やカシの木のまわりにイノシシの足跡をよく見つけることがあります。

無人のカメラを仕掛けて撮影していると、意外に昼にも歩き回っていることが確認できました。
ツアー中も、餌探しに夢中になっているイノシシを見つけることがあるので、
明るいうちに出歩いているようです。

イノシシ VS 農家さん

西表島には田んぼがあり、サイクリングをしていると田んぼの中で子連れのイノシシが歩き回っているのを見たりもします。
農家さんにとっては、たまったもんじゃないイノシシ。猪垣という垣根を築いたり、柵を張って山から下りてきたりするのを防いでいるようですが
イノシシも、賢い生き物のようで、スルリと抜けてきてしまうようです。

自然観察をする人間からすれば「あ、イノシシいるな」ぐらいの感覚ですが、地元の農家さんからしたら「またイノシシか」といったところでしょうか。
昔から作物をめぐって西表島でも、動物と人間の攻防は続いているようです。

カマイ(イノシシ)料理

西表島では、昔からイノシシを食べる習慣があります。
方言でイノシシのことを「カマイ」と呼び、カマイ汁やカマイのタタキなどで食べられることが多いです。

どんぐりを食べているせいか脂身は甘く、臭みも少ないです。
ニンニク醤油で食べるとサッパリといただけるカマイのタタキ。
ごはんが欲しくなるカマイ汁、意外とソバとも合うカマイソバ。
など、美味しい料理にしたつづみ。

昔から、お祝い事や行事に食べられていたイノシシ。
いまでも、その名残が残っており、各集落のお祭りごとや成人式などに参加するとイノシシ汁が全員にふるまわれたりします。
成人式の直前になると、猟師さんも大忙し。

「お祝いしてくれる皆で美味しいものを食べよう」「お祝いにきてくれてありがとね」という心が詰まっているのでしょう。
皆を笑顔にしてくれる料理でもあります。

そんな西表島には欠かせないイノシシ。
見つけた時には、カヤックで遠くから眺めてみてください。

 

ガイド飯田(写真/文)

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