西表島の自然を体験するツアーガイドという仕事を通じて、豊かな自然や島での暮らしについてを綴っています。

ふさなりの「ギランイヌビワ」、実のつけ方にビックリ!実をつける場所は…

実のつけ方が独特

【特徴】イチジクのような実、板状の根

【出会える度】★★★★☆

【分布】沖縄県、八重山諸島、台湾、中国大陸南部、東南アジア、オーストラリア

 

ギランイヌビワ

実のなる時期

ツアー中、森の中を歩いていると

様々な実が落ちていることに気づきます。

 

中には、動物がかじったものや、昆虫に食べられたものなど

食べかけの実を見ると、生き物たちの営みが森の中にあるんだな

と感じます。

 

5月前後はギランイヌビワの実のなる時期。

森の中で、大きく育った実が

「コツン、コツン」と落ちてきます。

 

たまに頭を直撃!!!

「アイタッ」

と頭上を見ると、必ずといっていいほどあるのが

「イヌビワ」の木。

 

特に、ギランイヌビワは実が大きく

頭に直撃すると「スッコーン!」といい音を響かせてくれます。

 

その実をつける場所が独特。

超個性的な実のつけ方をします。

 

実をつける場所は…「幹!」

そう、実をつける場所は「幹」なんです。

木を見上げると、枝ではなく、幹に実がついているではありませんか。

 

なんで、あんなところに実を…

絶句してしまうほどの光景です。

 

諸説ありますが、「実を見つかりやすいようにしている」

ので、幹についているようです。

コウモリなどの動物に見つけてもらいやすくするように。

 

負けられない戦いがそこにある

ジャングルでは昔から、多様な植物がひしめき合っていて

生存競争が激しい環境です。

今、残っている植物たちも、その生存競争を生き抜いてきた子たち。

 

できるだけ、勢力を広げようと、

生き馬の目を抜く戦いが繰り広げられています。

まるで「戦国時代」

 

誰を味方につけるかが生き残りのカギ

出来るだけ勢力を拡大させるためには、種を遠くまで飛ばす必要があります。

中には、タンポポの綿毛のようなものをつけたり、

プロペラのような羽をつけたりして、「風」を味方につけるものもいたりします。

 

ギランイヌビワは「動物」を味方につけることに決めたようです。

コウモリなどの小動物に食べてもらい、飛んでいった先で糞(うんち)をする。

 

糞(うんち)の中に入っている種が地面に落ち、

新たな芽を出させる。

 

そんな種の広がり方をさせています。

風に比べて、動物の方が機動力があるので、拡散力はバツグン!

しかも、胃液などで発芽抑制物質が

とりのぞかれている可能性が高いので、発芽率もバツグン!

 

パラシュート部隊のような攻撃の仕方で、

他の植物たちを混乱におとしいれます。

 

まさに「策士」

西表島のようなジャングルで「生きる」ということは

こんなにも、大変で、こんなにも努力が必要なことなんだな

と改めて感じさせてくれる植物です。

 

熟すと芳香がしてくる

若い実は緑色をして固いですが、

熟してくると茶色く、やわらかくなってきます。

 

若い実は青臭く、熟してくるとアルコールのような芳香。

天然の酵母で発酵しているようです。

 

熟した実を食べるともしかして、酔っぱらえる?

そんな気がしてくるほどの香りです。

夜な夜な、動物たちが「ギランイヌビワの木」を中心に、

宴をひらいているかもしれませんね。

 

月夜にコウモリたちが酔って飛び、

イノシシたちもガーガーいびきをかいて寝ている。

もしかしたら、そんな光景が西表島にもあるかも。

 

西表島にいるヤエヤマオオコウモリなんかは

木にしがみつくように実を食べています。

 

食事に夢中で気づかないほど。

とても美味しい実なんでしょうね。

 

西表島でギランイヌビワを探そう!

そんなイヌビワが見られるのも、4月~5月にかけて。

「実」ではなく、正式名称は「幹生花(かんせいか)」というもの。

イチジクみたいに内側に、小さい花をつけており

蜂などによって受粉してもらう仕組み。

 

そんな独特で個性的な植物を探してみてください。

ビックリするような場所に生えていたりしますよ!

森の植物たちの営み。

生き残るための知恵を感じてください。

 

ガイド飯田(写真/文)

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